カスハラの判断基準は?クレームとの違いや企業ができる対策を解説2024.09.26

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会問題として注目を集めています。しかし、カスハラと正当なクレームの線引きは難しく、多くの企業が対応に苦慮しているのが現状です。

この記事では、カスハラの判断基準や増えた背景、企業への影響、そして効果的な対策方法について詳しく解説します。カスハラへの理解を深めて適切な対応策を学ぶことで、顧客の満足度を向上させましょう。

カスハラの判断基準は?

カスハラとは、顧客が企業や従業員に対して行う理不尽な要求や暴言、脅迫などの行為を指します。しかし、その判断基準は必ずしも明確ではありません。 顧客が正当に権利を行使しているのか、それともハラスメントなのか、線引きが難しい場合も多々あります。ここからは、カスハラと正当なクレームの違いや、具体的な判断基準について詳しく見ていきましょう。

カスハラと正当なクレームの違い

カスハラと正当なクレームを区別することは、顧客対応において非常に重要です。たとえば、タクシーの運転手が道を間違えたとします。 正当なクレームでは、道を間違っていることを指摘して代替ルートを提案します。一方で、道を間違ったことを怒鳴って怒り、料金を払わないといったことを主張するのがカスハラです。

正当なクレームは、製品やサービスの不備に対して具体的な指摘や解決策を含んでいるため、企業にとって貴重なフィードバックとなります。 その一方で、カスハラは理不尽な要求や攻撃的な言動を伴うことが多く、従業員に過度な精神的負担をあたえます。

ただし、中には両方の特徴を併せ持つ「グレーゾーン」のケースも存在し、慎重に判断することが重要です。企業はカスハラと正当なクレームの違いを明確に理解し、適切な対応策を講じる必要があります。

カスハラの判断基準

カスハラを適切に判断するためには、具体的な基準を設けることが不可欠です。一般的に、カスハラの判断基準は大きく2つに分類されます。 1つ目は「要求する内容の妥当性」です。顧客の要求が社会通念上、明らかに過剰または不合理である場合、カスハラと見なされる可能性が高くなります。たとえば、商品の無償提供や従業員の処分など、通常のサービス範囲を大きく逸脱する要求がこれに該当します。

2つ目の基準は「要求を実現するための手段・態様の相当性」です。たとえ要求の内容が妥当であっても、その主張方法が社会通念上、許容範囲を超えている場合はカスハラとなります。

具体的には、大声で怒鳴る、脅迫的な言葉を使う、長時間にわたって同じ要求を繰り返すなどの行為が挙げられます。カスハラの基準を明確に設定して従業員間で共有することで、カスハラに適切な対応ができます。

カスハラが増えた背景

近年、カスハラの増加が社会問題として取り上げられることが多くなっています。この現象には、顧客の権利意識の高まりやインターネットの普及による情報発信の容易さ、さらには新型コロナウイルスの感染拡大に伴うストレス増大など、いくつかの要因が絡み合っています。ここからは、カスハラが増えた背景について、詳しく見ていきましょう。

顧客の発言力の増加

消費者保護の観点から顧客の権利が重視されるようになり「お客様は神様」という考え方が広く浸透しました。この風潮は、顧客サービスの向上を促す一方で、一部の顧客による過剰な要求や理不尽な振る舞いを助長する結果となりました。

顧客の発言力が増したことで、企業側が過度に顧客の要求に応じようとする傾向が強まり、カスハラを誘発しやすい環境が生まれたのです。顧客の声を尊重しつつ、適切な境界線を設けることが今後の企業にとって重要な課題となります。

SNSの普及

インターネットの普及により、顧客が企業に対して直接意見を表明する機会が増えました。これにより、些細な不満でもすぐに企業に直接伝えられるようになり、時には攻撃的な言動につながることもあります。

とくにソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の普及は、カスハラ増加の一因となっています。SNSの特性上、個人の意見や経験を簡単に広く拡散でき、企業への不満や批判があっという間に多くの人々の目に触れるようになりました。

この状況下で、一部の利用者が「ネットに悪評を投稿する」といった脅しを武器に、過剰な要求をするケースが増えています。さらに、SNS上での匿名性が、攻撃的な言動を助長する側面もあります。

実名を明かさずに批判や中傷を行えるため、通常の対面コミュニケーションでは控えるような過激な表現が使われやすいです。 企業側もSNS上での評判を気にするあまり、理不尽な要求に応じてしまうケースがあり、結果としてカスハラを助長する悪循環に陥ることがあります。

このような状況を改善するには、SNSリテラシーの向上と、適切な情報発信の仕方を社会全体で認識する必要があります。

コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの感染拡大は、社会全体にストレスと不安をもたらし、カスハラ増加の一因となっています。感染予防対策や行動制限により人々の日常生活は大きく変化し、精神的なプレッシャーが高まっています。

閉塞感のある環境の中で、些細なことでイライラしたり、攻撃的になったりする人が増えており、それが顧客対応の場面でのカスハラにつながっています。また、コロナ禍での経済的不安や将来への不透明感も、カスハラを増加させる要因となっています。

生活に余裕がなくなることで、サービスや商品に対してより厳しい目を向ける人が増え、時には過剰な要求につながることもあります。企業は、このような社会状況を踏まえつつ、丁寧な説明と柔軟な対応を心がける必要があるでしょう。

カスハラによる企業の影響は?

カスハラは、企業に多大な悪影響を及ぼします。まず、従業員のメンタルヘルスに深刻な影響をあたえる可能性があります。 モチベーションが低下したり離職率が上昇したりすると、企業の生産性に悪影響を及ぼすだけでなく、カスハラへの対応に時間と労力を割かれることで、本来の業務に支障が出る可能性も高くなります。

さらに、カスハラの事例がSNSなどで拡散されると、企業イメージの低下を招く恐れがあります。企業のイメージが悪くなると、顧客離れや新規の顧客の獲得が難しくなり、企業の収益に直接的な影響をあたえかねません。

加えて、カスハラへの対応が適切でないと判断された場合、法的なリスクも生じる可能性があります。このように、カスハラは企業の経営に多面的かつ深刻な影響を及ぼすため、適切な対策を講じることが重要です。

カスハラを防ぐために企業ができることは?

カスハラ対策は企業にとって重要な課題です。従業員を守り、健全な職場環境を維持するためにさまざまな取り組みが必要となります。ここでは、企業がカスハラを防ぐために実施できる具体的な対策を紹介します。

カスハラを軽視しない

カスハラ対策の第一歩は、この問題を重要視することです。「お客様は神様」という考え方にとらわれすぎず、従業員の安全と尊厳を守ることの重要性を認識しましょう。

まずはカスハラの実態や影響について社内で情報共有を行い、問題意識を高めることが大切です。カスハラに対して明確な方針を示すことで、従業員は安心して業務に取り組め、結果として顧客サービスの質の向上にもつながります。

マニュアルを作成する

カスハラ対応のマニュアルを作成することは、従業員が一貫した対応を取るうえで非常に有効です。マニュアルには、カスハラの定義や判断基準、具体的な対応手順などを明確に記載します。

現場の従業員の意見を積極的に取り入れ、実践的で効果的なマニュアルを作成しましょう。また、定期的にマニュアルの見直しと更新を行い、常に最新の状況に対応できるようにすることも重要です。

相談・対応の体制を整える

カスハラに遭遇した従業員が、安心して相談できる体制を整えましょう。専門の相談窓口を設置したり、上司や人事部門との定期的な面談の機会を設けたりなど相談しやすい環境づくりが有効です。

匿名での報告システムを導入することも効果的です。相談を受けた際には、真摯に耳を傾けて適切なサポートを提供することが重要です。必要に応じて、法律の専門家や心理カウンセラーとの連携も検討しましょう。

定期的にメンタルチェックをする

カスハラは従業員のメンタルヘルスに大きな影響をあたえるため、定期的なメンタルチェックを実施することが重要です。定期的にストレスチェックやアンケート調査を行い、従業員の心理状態を把握しましょう。

必要に応じて産業医や心理カウンセラーとの面談を設定し、適切なケアを提供します。また、ストレス解消法や自己ケアの方法についての情報を提供するのも効果的です。

定期的なメンタルチェックは、カスハラの予防だけでなく、職場全体の健康的な環境づくりにも貢献します。

研修を実施する

カスハラ対策として、定期的な研修の実施も効果的です。全従業員を対象に、カスハラの定義や具体的な事例、適切な対応方法などについて学ぶ機会を設けましょう。

カスハラに遭遇した際の適切な対応方法や、チーム全体でカスハラを防ぐための取り組み方について学ぶことが大切です。 また、ロールプレイングを取り入れることで、実践的なスキルを身につけられます。定期的な研修は、従業員の意識向上とスキルアップにつながります。

こちらの記事では、クレーム対応が上手い人の特徴を解説しています。現場で役立つコツも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ

カスハラは企業にとって看過できない重要な問題です。正当なクレームとの違いを理解し、適切な判断基準を設けることが重要でとなります。 また、カスハラが増加している社会的背景を認識し、その影響の大きさを理解することで、より効果的な対策を講じられます。

企業がカスハラを軽視せず、マニュアルの作成や相談体制の整備、研修の実施といった対策を講じることで、従業員を守りながら顧客満足度を向上させられるでしょう。

このような取り組みを効果的に進めるには、専門的な知識と経験が必要です。クリエイティブアルファは、小売・飲食業などの企業様、ショッピングモールのテナント様向けに、カスハラ対策を含む研修サービスを提供しております。

スタッフの育成に関する課題をヒアリングし、カスハラ防止と適切な対応に焦点を当てた、オーダーメイドの研修プログラムを企画いたします。プロフェッショナルの支援を受けて、より効果的なカスハラ対策を実現し、従業員と顧客の双方が満足できる環境づくりを目指しましょう。