顧客ロイヤルティとは?重要性・顧客満足度との違いや向上施策を解説
「顧客満足度は高いのに、なぜかリピーターが増えない」
「シーズンが変わると、顧客がほかのブランドに流れてしまう」
このような課題を抱えている店舗は少なくありません。
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定のブランドや企業に対して抱く「信頼」や「愛着」の度合いを指します。一時的な満足を提供するだけでなく、長期的な関係を築くことで、安定した収益基盤を確立できます。
本記事では、顧客ロイヤルティの基本的な定義から、測定指標(NPS・LTV)、向上のための具体的なステップ、店舗の現場で実践できる施策例まで詳しく解説します。店長やスタッフの接客スキルを底上げし、顧客との信頼関係を深めるためのヒントをお届けします。
顧客ロイヤルティとは?
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定のブランドや企業に対して抱く「信頼」や「愛着」の度合いを指します。単なる一時的な満足ではなく、継続的に商品やサービスを利用したいと感じる心理的な結びつきのことです。
顧客ロイヤルティは「心理的ロイヤルティ」と「行動的ロイヤルティ」の2つの側面から成り立っています。
● 心理的ロイヤルティ:ブランドへの信頼感や好意といった、感情的な愛着
● 行動的ロイヤルティ:「実際にリピート購入をする」「他者に勧める」といった、具体的な行動
真のロイヤルカスタマーとは、この両方が高い水準にある顧客を指します。
顧客ロイヤルティと顧客満足度の違い
顧客満足度とは、商品やサービスを利用した「その時点」での満足感を測る指標です。購入直後に「満足した」と答えても、それが次回の購入につながるとは限りません。たとえば、旅行先で素晴らしい接客を受けても、再訪機会がなければリピーターにはなりません。
一方、顧客ロイヤルティは「継続性」と「収益性」を重視する概念です。長期的な視点で、顧客が企業やブランドとの関係を維持し続けようとする意思や行動を測ります。一時的な満足だけでなく「またこの店で買いたい」と思ってもらえる、長期的な愛着を育むことが重要なのです。
顧客ロイヤルティが重要視される背景
近年、顧客ロイヤルティが重要視される背景には、新規顧客獲得コストの増加があります。一般的に「新規顧客の獲得には、既存顧客の5倍のコストがかかる」とされるなか、既存顧客との関係を深めることで得られるLTV(顧客生涯価値)の最大化に注目が集まっています。
ロイヤルティが高い顧客は、長期間にわたって繰り返し購入し、購入単価も高く、口コミやSNSでの推奨により新規顧客の獲得にも貢献してくれます。
アパレル業界では、顧客に自社ブランドを第一選択肢として選び続けてもらうため、接客やサービスを通じた情緒的なつながりが不可欠です。
顧客ロイヤルティを高めるメリット

顧客ロイヤルティを高めることは、店舗経営にさまざまなメリットをもたらします。
ここでは、データに基づいた具体的なメリットを3つ解説します。
リピート率アップ&解約率ダウン
顧客維持率をわずか5%向上させるだけで、利益が25%から95%も増加するというデータがあります。ロイヤルティの高い顧客は「このブランドなら安心」という心理的なつながりがあるため、他ブランドへの乗り換えを検討しません。
店舗スタッフが顧客の好みや購買履歴を把握し、パーソナライズされた提案を行うことで、継続的な来店行動につながります。
こちらの記事では、CS(顧客満足度)向上のためにできることについて解説しています。
メリットや成功事例も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
購入単価アップ
ロイヤルティが高い顧客は低い顧客と比べて、平均購入金額が1.3倍大きくなることがわかっています。ブランド全体への愛着があるため、クロスセルやアップセルを受け入れやすくなるのです。
たとえばアパレルであれば、トップスだけでなく、ボトムスやアクセサリーも合わせて購入してくれる可能性が高まります。
ブランドの認知拡大
ロイヤルティが高い顧客の85%が、実際に他者へ推奨した経験があります。友人や家族からの推薦は、広告よりもはるかに信頼性が高く、購買行動に直結しやすい情報源です。
とくにSNS時代においては、ロイヤルカスタマーが自発的に投稿する商品写真やレビューが、広範囲に拡散される可能性があります。
顧客ロイヤルティの計測に用いられる主な指標
顧客ロイヤルティを効果的に向上させるためには、まず現状を正確に把握することが必要です。
ここでは、心理的ロイヤルティを測るNPSや継続利用意向、行動的ロイヤルティを測るLTVなど、代表的な測定指標を4つ紹介します。これらを組み合わせて活用することで、多角的にロイヤルティの状態を分析できます。
NPS(ネットプロモータースコア)
NPSは「あなたはこの企業や商品を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」という質問に対し、0から10の11段階で評価してもらい、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値です。
企業の収益性との相関が高く、定量的な数値だけでなく「なぜそのスコアをつけたのか」という理由もあわせて収集することが重要です。
顧客満足度
顧客満足度は、商品やサービスの品質に対する評価を測る基本的な指標です。ロイヤルティが低い原因を探るツールとして有効に機能しますが、満足度が高くても、よりよい条件の競合店があれば簡単に乗り換えてしまう顧客も存在します。
継続利用意向
継続利用意向は、顧客が今後も同じブランドや店舗を利用し続けようと考えているかを測る指標です。測定にはNRS(ネットリピータースコア)という評価テストが用いられることがあります。これによって、満足度が高い顧客が競合へ流れるリスクを把握できます。
LTV(ライフタイムバリュー)
LTVは「顧客生涯価値」を意味し、一人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす総利益を表す指標です。代表的な計算式は「平均購買単価×購買頻度×継続購買期間」で、顧客ロイヤルティの「行動的な側面」を定量的に把握するのに適しています。
顧客ロイヤルティ向上までのステップ
顧客ロイヤルティを高めるためには、データに基づいた体系的なアプローチが必要です。現状把握から目標設定、施策立案、実行と改善まで、PDCAサイクルを回すことが重要です。
ここでは、店舗の現場で実践できる4つのステップを、具体的なフレームワークとともに解説します。
1:データ収集を行う
NPSやLTV、購買頻度などの定量データと、アンケートの自由回答やSNSでの口コミといった定性データの両方を収集します。
カスタマージャーニーマップを作成し、顧客が商品を認知してから購入、リピートまでのプロセスを可視化することで、各接点での体験を俯瞰できます。
2:現状を分析し目標を設定する
SMART(Specific、Measurable、Achievable、Realistic、Timely)の法則を活用し、具体的な改善目標を設定します。顧客をセグメント分けし「高LTV×低NPS」の顧客層など、優先的に改善すべき層を特定することが重要です。
3:解決につながる施策を導き出す
「顧客の期待を超える感動体験」の提供を目指します。顧客接点ごとの重要度を数値化し、来店時の第一印象、試着時の対応など、各接点が最終的なロイヤルティにどの程度影響しているかを分析し、影響度の高い接点から優先的に改善します。
4:施策の実行と改善を繰り返す
施策を実行したら、その効果を測定し、PDCAサイクルを回します。地道なCX改善の積み重ねが、長期的な信頼関係の構築につながります。店舗スタッフが自発的にロイヤルティを意識し、日々の接客で顧客との関係構築を実践できる組織文化を育むことが鍵となります。
顧客ロイヤルティを高めるための施策例
ここでは、顧客ロイヤルティを高めるための施策として、店舗で今すぐ実践できるアクションを4つ紹介します。
顧客一人ひとりとの接点を増やす
店舗スタッフがCRMシステムなどを活用して、顧客の購買履歴や好みを事前に把握しておくことで、来店時に個別に丁寧なアプローチができます。
「前回お買い上げいただいたジャケットに合うパンツが入荷しました」といった、その顧客だけに向けた提案により、顧客は「大切にされている」と感じることができます。
顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を向上させる
顧客体験を向上させるには、スピーディーかつ共感的な対応と、顧客の手間や心理的負担を減らす工夫が何より大切です。
たとえば、顧客からの問い合わせには、電話・メール・チャットなど、どの手段でも迅速かつ親切に対応しましょう。オムニチャネル対応により、顧客は自分に合った方法で気軽にやり取りできます。
さらに、店舗での待ち時間の短縮や整理券・事前予約の活用で、顧客の手間を減らすことも顧客体験向上に直結します。清潔で快適な空間づくりや照明・音楽の工夫で、居心地を高めるのもよいでしょう。
企業やブランドについて積極的に情報発信する
企業やブランドの背景にあるストーリー、商品づくりへのこだわりなどを積極的に発信することが重要です。
店舗での接客時に、スタッフがブランドのストーリーを伝えることで、商品への愛着が深まります。店舗スタッフ自身がブランドのファンであり、その魅力を自分の言葉で語れることが、顧客の共感を生む第一歩です。
ロイヤルティプログラムを導入する
購買金額や来店頻度に応じてポイントを付与する仕組みは、リピート購入を促進します。とくに効果的なのは、有料会員向けの新商品先行販売会や会員限定サービスといった「特別感の演出」です。
ただし、最も重要なのは商品やサービスの質、そして接客を通じた人と人とのつながりです。プログラムはあくまで補助的な役割であり、顧客との信頼関係や満足度があってこそ効果を最大化できます。
まとめ
顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して抱く信頼や愛着の度合いを指し、心理的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの両方が高い顧客が「真のロイヤルカスタマー」となります。
ロイヤルティを高めることで、リピート率の向上、購入単価のアップ、口コミによるブランド認知拡大といったメリットが得られます。とくに接客・販売の現場では、スタッフ一人ひとりが顧客との関係構築を意識し、期待を超える感動体験を提供することが求められます。
クリエイティブアルファでは、接客・販売・サービス業界に特化した実践的な研修プログラムをご提供しています。現場で即活用できる接客スキルの向上から、顧客ロイヤルティを高めるための具体的なアプローチまで、貴社の課題に合わせたカスタマイズが可能です。
また、覆面調査サービスを通じて、客観的な視点から店舗の接客品質を評価し、改善ポイントを明確化することもできます。
店長やスタッフの接客スキルや顧客との関係構築力を底上げしたい、店舗スタッフが自発的にロイヤルティを意識する組織文化を作りたいとお考えの方は、専門的な研修サービスの活用をご検討ください。
※NPSはベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標です。
クリエイティブアルファの「顧客ロイヤルティ向上研修」では、顧客の信頼と忠誠心を高め、リピーターを獲得するための具体的な戦略を学ぶことができます。
ぜひご活用ください。
Contact
お問い合わせ
ご質問やご相談は受付時間内にて、お電話でもお受けいたしております。どうぞお気軽にご連絡ください。
受付時間 平日 10:00〜18:00